脳梗塞の診断に有用な画像とは?
前回の記事ではMRI画像の基本的な見方ということで、それぞれの画像の特性を踏まえたうえで、臨床的に何に着目し、どういった診断の時にその画像を用いるのかを簡単に解説させて頂きました。
その中で、脳梗塞の診断の初期にみる拡散強調画像(diffusion-weighted image:DWI)について本日は解説させて頂きます。
1.拡散強調画像について
拡散強調画像ってなんだったけ?
そういった方々のために再度復習です。
画像の特徴として、ぜひ覚えといて頂きたいのが頭蓋骨がないというのがひとつ特徴になります。
なのでMRIの中でどれがDWIだったかなと悩んだ時は、この頭蓋骨がないものをまずは第一に探し出してください。
2.拡散強調画像ってそもそもどういった特性があるの?
では、ここから本題に入っていきます。
DWIって、名前の通り拡散するものを強調している画像になります。
・・・ん、そもそも何が拡散しているの?
拡散強調画像(DWI)は、脳実質内にある水分子の拡散を画像化したものとされています。
本来であれば脳の中は脳脊髄液で満たされており、また脳細胞自体を覆っている細胞外腔にも細胞間質液があることで、脳内では水分子が自由に動き回れる(拡散)状態になっています。
しかし、この水分子が何らかの影響で動き回れなくなるとどうでしょうか?
例えば、川の流れをイメージしてください。
その川の中にとても大きな石があり、水の流れが妨げられる場合や、水そのもののが雨などにより土砂となり水そのものが泥水となり、粘稠度(ドロドロ間)が高くなってしまう場合です。
そうすると川の流れは極度に悪くなります。
これと同じことが脳の中で起こるのが脳卒中です。
脳梗塞を例に考えると、脳の血管が詰まることにより脳細胞自体が膨張し、間質内の水分子の自由度を低下させるとされています(いわゆるこれが、細胞毒性浮腫の状態)。川の中に大きな石がはいり(脳細胞の膨張)、水の流れが塞き止められるイメージです。
そのため、水分子の自由度を失った部分が拡散しにくい状態とされ、その部分が高信号(白くなる)となるのが、脳梗塞の初期の段階としてDWIで白く映るメカニズムになります。
そして、それが亜急性~慢性期になるにつれ、詰まった血管支配領域の脳細胞が壊れるため、間質内の水分子が動けるようになり、細胞内の水も動けるようになります。そのため、古い脳梗塞をDWIで見ると拡散している状態なので低信号(黒くなる)として画像として現れるのがDWIの特徴となります。
3.脳梗塞の診断に拡散強調画像を使うわけ!!
これらのことから、臨床的にDWIを用いるとするならば、
1.発症初期の段階としてDWIで脳梗塞の確認をする
2.脳梗塞が新しいものなのか、古いものなのかを大まかに判断する
3.新しい脳梗塞では高信号(白く)、古い脳梗塞では低信号(黒く)なる
こういった観点からDWIを臨床の中で使ってみてはいかがでしょうか?
このようにMRI画像をとってもどの疾患やどの症状から予測して何をみるかを頭に入れながら必要な脳画像を抽出できるようにしておけば、画像をみる時間が一気に短縮されると思います。
一度脳画像が読めるようになれば忘れることはありません。そして、そこから臨床思考がより具体的に広がっていくことでさらに学習効果を高めてくれます。
そのためにまずは脳画像をみる機会や回数を増やしていく必要があります。
脳画像に参考にしているのはこちら!!
今後、RehaNusセミナーではこのように脳画像の基礎的な見方からそれを臨床応用していくためのポイントをお伝えしていきます。実際の症例を通してまずは脳画像に慣れることから一緒にはじめてみませんか?
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